「長寿命核廃棄物の核変換処理技術開発のための中性子捕獲反応断面積の系統的研究」

科学研究費補助金 基盤研究(S)

研究期間:平成22年-26年

研究経費:166,800千円

研究代表者:井頭政之(東京工業大学)

共同研究機関:東京工業大学、日本原子力研究開発機構、北海道大学、京都大学

研究の背景・目的

核分裂炉で生成される長寿命核廃棄物の処理・処分については、他の放射性核種と共にガラス固化・一時貯蔵・地中埋設が我が国の今日の国策となっています。

しかし、長寿命核廃棄物を分離・抽出して、安定核種に核変換処理すれば、地中埋設における環境負荷を大幅に軽減することができます。また、長寿命核廃棄物は私たちの遠い子孫にとっては負の遺産であるという倫理学的問題も解決することができます。

このように、長寿命核廃棄物の核変換処理・処分は非常に重要な技術開発課題です。中性子核反応を用いた核変換が現実的技術として期待されており、この研究プロジェクトで対象とする中性子捕獲反応は最も重要な核変換反応です。しかし現在、核変換処理技術開発を進めるために必須な中性子捕獲反応断面積データベースの精度は極めて不十分です。したがって、データベースの高精度化が喫緊の課題となっています。

この研究プロジェクトでは、長寿命核廃棄物の中性子捕獲反応断面積の高精度測定、測定結果の統一的理論解析、長寿命核廃棄物の中性子捕獲反応機構の解明を行います。また、測定できない核種・中性子エネルギー領域の中性子捕獲反応断面積を理論計算により求め、中性子捕獲反応断面積データベースの高精度化に役立てることを目的とします。

研究の方法

新しい大強度核破砕パルス中性子源を用いた実験施設「大強度陽子加速器施設 物質・生命科学実験施設(J-PARC MLF)」に設置された「中性子核反応測定装置(ANNRI)」を用いて実験を行います。測定は、ANNRIでの熱領域からkeV領域までの広いエネルギー領域で長寿命核廃棄物の中性子捕獲反応断面積の高精度測定を中心に据えています。また、これまで実績を有している東京工業大学ペレトロン加速器施設でのkeV領域の測定と京都大学電子線形加速器施設での熱領域からeV領域の測定を合わせて行います。お互いの重複する核種・中性子エネルギーに対する結果を比較することで、信頼性の極めて高い測定結果を導出します。導出された信頼性の高い断面積とガンマ線スペクトルの測定結果を同時に理論解析することで、長寿命核廃棄物の中性子捕獲反応機構を解明して捕獲反応断面積の理論予測精度を飛躍的に向上させ、測定できない核種・中性子エネルギー領域の捕獲反応断面積の精度良い計算値を与えます。

期待される成果と意義

この研究プロジェクトの最終的な成果となる長寿命核廃棄物(Zr-93, Tc-99, Pd-107, I-129, Np-237, Am-241, Am-243, Cm-244, Cm-246)の中性子捕獲反応断面積の精度良い測定値と計算値は、核変換処理技術開発において非常に重要な核データとなり、その意義は極めて大きいものとなります。また、本研究で測定するSe, Zr, Pd, Sn, I, Csの安定同位体の捕獲反応断面積データは、同位体分離を行わない核変換システムの研究において重要な核データとなります。

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